ダブリーズ、ザンジャン、ビジャー。絨毯の町で。

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今年、2024年の夏に、絨毯の買い付けでイランへと行きました。ダブリーズやザンジャン、ビジャーという小さな町へ。前回まではイランの中でもテヘラン・ナイン・クム・イスファハンなど、日本でも有名な絨毯産地へ足を運んでいたのですが、今回はより素朴な雰囲気の場所。

ダブリーズ・ザンジャン・ビジャーなどで
5日間をかけて見た、伝統的な手織りの絨毯たち。

まるで町全体が絨毯屋さんのよう。

地元の人が行くような、住宅街にある絨毯屋さんをたくさん巡りました。多い日は1日に10軒。5日間の滞在で、30軒は訪れたかなと思います。

今回出会った絨毯たちを織っていたのは、クルド民族という、イランのなかでも『嘘をつかない』といわれる誠実な民族。彼らが10年、100年と前から織り続ける伝統的な手織りの絨毯は本当に綺麗でした。たとえば訪れたうち、ビジャーという町の絨毯は鉄の絨毯と言われていて、僕でも持てない重さ。大判なら50kgほどあり、ウールがすごくぎゅっと詰まった織目です。ふわっとゆるくて柔らかな肌触りではないので、あまり日本人好みではないかもしれないのですが、格好いいなあ、と思います。

お店を廻るあいだ、「この絨毯にはどんな歴史がありますか?どんな思いで作られましたか?」と尋ねたら、それならこれを織ったおばあさんに会わせてあげる、と、さらにとことこ住宅街を歩いて、おばあさんが絨毯を織る一室に案内されたこともありました。町全体が絨毯屋さんのようで、隣の建物は絨毯の色を染める人だったり、もうひとつ隣の人は糸を売っている人だったり、絨毯を中心としてみんなで生活を営んでいるような町々でした。

絨毯の売り買いは非常に単価の高い商売なので、たまに、お金儲けを重視する絨毯屋さんもいます。そういう商売での交渉を楽しむのも勿論醍醐味だと思うのですが、あまり欲がないというか、商売っけがない、でも本当に絨毯に詳しい彼らと話していると、「こういう誠実な人が織っている絨毯を僕たちが仕入れて次の人に渡すとき、どんな場所でどんな風に織られたものか説明して、大事に使ってもらいたい」とすごく感じました。

今回は現地の方への修理の依頼も兼ねており、草木染めや、シャービングといって表面をカットし絨毯をメンテナンスする作業もしてもらいました。普段、絨毯の買取・販売をおこなっている人間として、間近に絨毯の歴史や文化を感じたり、作っている人々の手仕事を見たりして、いい経験になったと思っています。