家具にまつわる“奇遇”な話。

家具は世界だ。


最近、僕が思っていることを語りますね。

このあいだ、バロッサのメイトチェアをお引き取りしたんです。
愛着をもって30年、ついにメイトチェアを手放す日がきた、とLINEでご連絡くださった、垂水のお客様がいて。そのご連絡をいただいたとき僕はすぐにぴんときて、「あ、こちらのチェアは30年ほど前に、セブンハーツさんでご購入なさいましたね」とお返事したんですよ。


何でなんかな。

実は家具買取をしていて、“奇遇なこと”ってすっごく多い。ほんまは、奇遇とか信用してないタイプなんですけど。でも。「ドレクセルの、○○シリーズの、○○のタンス」……なんて別の例を挙げると。アメリカから輸入されたのが昭和50年8月、トラック1台分くらいのはずなのに、その家具を手放そうとお電話をくださる方々からの連絡が、1週間のうちに3回くらいかぶるんですよね。
これがこの例だけのたった1回とかじゃなくて、いつもいつも、いっつもいつも、そうなるんですよ。バロッサバレンティの買取も、普段はあまり機会がないけれど、一度ご連絡が入ると立て続けに3、4件は入る。その他、年に1、2件くらいしかないようなメーカーでもなぜか、同じタイミングで同じときに、別のお客様から電話が鳴る。これ、何でなんかなー。と。

家具買取屋として“奇遇”をどう見るか。

そうして気になってずっと考え続けてて、もう少し考えがまとまったら、理屈で伝えられる気もしてて。今考えているのはね、こんな感じなんです。
どなたかが、40年くらい前に、アメリカのどこかの……家具の展示会とかに行って、「よし!これを買い付けよう」と決めたとしましょう。それで40フィート1社分、まあ多分4、50本かな、その家具を買い持ち帰るとします。するとそれが全国に散らばって、“神戸に1本” “大阪に1本”って、やってくるわけですね。そしてどこかのタイミングで新築のおうちやお金持ちのおうちに飾られる。そのあと、10年、20年、30年……と時間が流れていく。そしたら、それぞれのご家庭で世代も交代して、その家具を娘さんやお孫さんが使うようになる中で、生活の環境なんかも変化していく。「そろそろ手放そうかな」と考え始め、手放すならどこに電話しようと考える。
そのときに、「あ、なんかここえらい家具を大事に扱ってくれそうやから、ここに頼んだらまた次の誰かが大事に使ってくれるんちゃうか」と思いついてくれて……、神戸のお客様から、大阪のお客様から、うちの電話が立て続けに鳴る。
そんなふうに、“同じタイミング”だと思うんですよね。
 
それが何十回と続くと、なんか人って、同じ時間を共有してるんやなって思うんですよ。皆さん暮らしは違えども、同じ時期に買って同じ時を過ごしたから、手放すタイミングは同じになる。ちがう生活をちがう場所で送っていても、同じ家具と同じ時をすごしてるんです、きっと。